労使のトラブル事例とその予防のポイント
ここでは、就業規則に関するトラブル事例とその予防のポイントをかいつまんで、ご紹介します。
これらのトラブルは、就業規則の作り方、周知徹底によって防げるトラブルです。ぜひ、就業規則の作成・見直しの資料として下さい。
パートタイマーに関するトラブル例
- パートタイマーには、退職金を支給しないでおこうと思っていたが、今回退職するベテラン女性パート社員に退職金を請求されてしまった。
- 事前にパートタイマー就業規則などでパートタイマーには退職金制度がないことを規定して、それを周知しておけば防げたトラブルです。
採用に関するトラブル例
- 入社時に必要な書類を提出しない新入社員がいて、困っている。
- 就業規則に入社時に必要な書類を提出するように定めておき、それを説明することで、提出を促すことができます。
- それでも提出しない場合は、就業規則に規定している懲戒を行うことが可能です。
- 新入社員には毎年採用時に戸籍抄本を提出させているが、今年の新入社員から「これはプライバシーの侵害ではないか?」と言われた。
- 戸籍抄本ではなく、住民票記載事項証明書を提出させるべきです。
- 担当者などに周知するため、就業規則に記載しておいた方がよいでしょう。
試用期間に関するトラブル例
- 試用期間中に正当な理由のない欠勤や遅刻を繰り返す社員を解雇したところ、「不当解雇だ!」と言われた。
- いきなり解雇を行うのではなく、まずは口頭での注意を行います。それでもなおらない場合は、就業規則に沿って、まずは譴責や減給などの懲戒を行います。その場合は解雇があり得ることを説明します。そして、最終手段として、解雇を予告します。
- もちろん、懲戒処分を行うためには、事前に懲戒に関することを就業規則に定めておくことが必要です。
- 口頭での注意や懲戒の内容については、必ず記録を残しておきます。これはトラブルになった場合に役立ちます。
- 就業規則や労働契約に試用期間を定めている場合には、雇入れ後14日以内に解雇するときは、解雇予告や解雇予告手当の支払いをする必要がありません。
- 試用期間中や終了時の解雇(本採用拒否)は、通常の解雇より幅広く認められる傾向にあります。
- できれば、通常の解雇の事由だけでなく、試用期間中や終了時の解雇(本採用拒否)の事由についても就業規則に規定しておいた方がよいでしょう。
服務規律に関するトラブル例
- 上司の男性社員が、部下の女性社員にセクハラ行為を行っていたことが、その女性社員からの苦情で判明したが、どう対応すればよいか困っている。
- セクハラについては、どのように対応するのかなどを事前に就業規則に定めておいた方がよいでしょう。
- 会社のパソコンで私用のE-mailをやり取りしていた社員を懲戒処分としたら、「不当処分だ!」と言われた。
- どのような行為について懲戒処分を行うのかを事前に就業規則に記載しておき、それを周知しておく必要があります。
- 就業規則に記載していない懲戒処分や就業規則に記載していない事由による懲戒処分は、原則できません。
- マイカー通勤をしている社員が事故を起こし、その社員は充分な任意保険に加入していなかったため、相手方の被害者が会社に対して損害金を請求してきた。
- 事前に、就業規則にマイカー通勤の条件(任意保険の内容など)について定めておき、それを周知させ、マイカー通勤を許可制にしておくことで、マイカーの任意保険未加入の状態を防ぐことができます。
労働時間・休日・休暇に関するトラブル
- 妊娠中の女性社員から、健康診査のため通院休暇請求があったが、上司が労働基準法にそのような規定はないと拒否したところ、その女性社員から「男女雇用機会均等法違反だわ!」と言われた。
- 男女雇用機会均等法では、妊娠中の女性労働者の健康診査のための休暇を与えなければならないことになっています。労働基準法以外の法律についても注意する必要があります。
- 担当者によって対応が異なったり、担当者が忘れたりしないように、就業規則に規定しておく必要があります。
- 特に休暇については、就業規則に必ず記載しなければならない絶対的必要記載事項にあたります。
休職に関するトラブル例
- 精神的な病気を持つ社員が、出勤したりしなかったりして困っている。
- 会社が強制的に休職を発令をできるように、事前に就業規則にそのような制度を記載しておいた方がよいでしょう。
- 病弱な社員が、1か月休職しては出勤し、またしばらくして休職しなければならなくなって困っている。
- 休職を繰り返す場合は、その期間を通算できるように、事前に就業規則に規定しておいた方がよいでしょう。
- 定められている休職期間が満了したのに復職できない場合は、解雇ではなく、自然退職になることを就業規則に規定しておいた方がよいでしょう。
退職・解雇に関するトラブル例
- 以前定年を迎えた社員の中には、再雇用している例があったが、今度新たに定年を迎える社員に再雇用しない旨を伝えたところ、「なんで俺だけ継続雇用されないんだ?これは不当だ!」と言われた。
- どのような場合に再雇用するのかの基準について、事前に就業規則と労使協定に定めておくことで、その基準に達していない従業員は再雇用する必要がなくなります。
- 2週間以上無断欠勤し、連絡のとれなかった社員が、いきなり出勤してきたので、解雇だと伝えたところ、「これは不当解雇だ!」と言われた。
- どのような場合に解雇するのか、合理的な解雇事由を事前に就業規則に定めておき、その規定に従って解雇することで、合理的な解雇であるとされる可能性が高くなります。
- 社員が2週間以上無断欠勤したときは、「労働者の責に帰すべき事由」として、労働基準監督署の解雇予告除外認定を受けることができる(即時解雇することができる)可能性があります。
給与・賞与・退職金に関するトラブル例
- 社員がいつの間にか引っ越しをしており、通勤手当を余分に着服していた。
- 就業規則に引っ越しした場合には、会社に報告する義務を記載しておくべきでしょう。
- できれば、労災保険の関係上、通勤経路も届出させておいた方がよいでしょう。
- 賞与の査定期間を、6月から11月までと就業規則に記載していたところ、11月30日付けで退職した社員が、賞与の支給時期の12月15日になって、「自分にも賞与をもらう資格があるはずだ!」と賞与の支給を請求された。
- 支給日に在籍している社員のみに賞与は支給することを事前に就業規則に規定しておくべきでしょう。
- 賞与は慣例で、6月と12月に支給していたが、最近の業績悪化のため、賞与の支給を取り止めたところ、社員の中から「賞与は賃金だ!支給するのが慣例なのに、勝手に支給しないのはけしからん!」という意見が出て困っている。
- 賞与は法律上必ず支給しなければならないものではありません。
- 会社の業績などの状況によって、賞与を支給しない場合があることを事前に就業規則に記載しておけば、賞与を支給しないことが可能です。
- 自己都合退職後の社員が会社の個人情報を持ち出していたことが、あとから発覚し、困りはてており、この社員には退職金を払いたくない。
- 退職金は法律上必ず支給しなければならないものではありません。退職金制度も必ず設けなければならないものではありません。
- どのような場合には退職金を支払わないのかを事前に就業規則に定めておいた方がよいでしょう。
- 退職後に違法行為や非違行為等が発覚した場合には退職金は支給しない旨を就業規則に規定しておくことで、上記の場合は退職金を支払う必要はありません。
制裁(懲戒)に関するトラブル例
- 3日連続して遅刻した社員がいたので、お灸を据える意味で、1日分の給料を差し引いたところ、その社員から「労働基準法違反だ!」と言われた。
- 懲戒処分を行うためには、事前に懲戒に関することを就業規則に定めておくことが必要です。
- 労働基準法には、就業規則に労働者に対する減給の制裁(懲戒ともいいます)を定める場合は、次の制限があります。
- 減給の1回の額が、平均賃金の1日分の半額を超えることはできません。減給の総額が、一賃金支払期における賃金の10分の1を超えることはできません。
雑則に関するトラブル例
- 会社は、年1回の定期健康診断を実施しているが、忙しいという理由で受診しない社員がいて困っている。
- 就業規則に労働者の健康診断受診義務について規定しておいた方がよいでしょう。
- 就業規則に定める受診義務に違反を繰り返す場合は、就業規則に規定する懲戒処分を行うことが可能です。
- 定期健康診断を受けた社員から、「その受診時間は労働時間だ!」と言われ、割増賃金を請求された。
- 定期健康診断の時間については、必ずしも労働時間にあたりません。その時間の賃金については使用者と労働者の話し合い等で決定することができます。
- トラブル防止のためには、就業規則に定期健康診断の時間の賃金について、規定しておいた方がよいでしょう。
以上、トラブル事例とその予防のポイントをご紹介いたしました。最近はこの他にも色々なケースの労使のトラブルが頻発しています。「ウチの会社は大丈夫!」とはっきり明言できる会社は皆無でしょう。大企業、中小零細企業を問わず、これらの問題は起こりえます。
このような面倒な問題が起きてしまってから対応をはじめるのと、事前に対応をとっておくのとは大違いです。中には、不要な示談金などが必要になってくる場合やもしかすると裁判になる場合もあります。面倒な問題が起こる前に早急に対応されることをお勧めします。
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